1.にんにくとは・・・
2.にんにくサプリメントと黒にんにく
3.にんにく市場規模と動向
3―1 にんにく作付面積と収穫量
3―2 にんにくの輸入先と輸入量
3―3 にんにくの主要産地
3―4 食と消費者ニーズの多様化
3―5 異業種の農業参入
3―6 黒にんにくで再生
4.国産にんにく価格高騰化の原因
にんにくとは・・・
にんにくとは、ネギ科(ユリ科)の多年草で、高さ約90センチぐらいまで生長し、香辛料や食用として用いられています。古代エジプトの時代から疲労回復や滋養強壮に効果のある食品として重用されており、賃金の一部をにんにくで支払われていたという記録もある。
日本に伝わったのは奈良時代で、918年の「本草和名」に日本最古のにんにくの栽培に関する記述がある。仏教の伝来とともに、強壮作用が煩悩(淫欲)を増長するとされ僧侶にはにんにくを食べることを禁止されていたが、効能について広く知られていたようで用いる人たちも少なくなかったと『日本書紀』や『源氏物語』などでもニンニクに関する記述が見られる。
にんにくは青果用としてだけでなく加工品、薬用原料としても供給されているが、近年はにんにくを発酵させた「黒にんにく」やにんにく・黒にんにくを使用したサプリメントが疲労回復や滋養強壮に効果のある健康食品・健康補助食品として多くの人に利用されている。
にんにくサプリメントと黒にんにく
高齢化社会の進展に伴い、中高年齢層を中心とした健康維持・増進、美容・アンチエイジング、エイジングケアへの高い意識を背景に健康食品の需要は高まるなか、相次ぎメーカーが参入して競争が激化している。そのなか、伝統食として認知度が高く、疲労回復、体力増進、生活習慣の改善などへの効果・効能が広く知られている「にんにくのサプリメント」は人気は安定している。
一方黒にんにくとは、生にんにくを高温・多湿という環境のもとで、約1ヶ月程度熟成発酵させて作られたもので、まっ黒。じっくり発酵・熟成に時間をかけることで、にんにく特有の臭いが取り除かれ甘くフルーティな味わい。
にんにくを熟成発酵させた黒にんにくは、生にんにくと比較して抗酸化力や有効アミノ酸などの機能が大きく上まわる特徴から近年、健康食品として人気が高く、にんにく100%を原料としているほか、糖度60度近い甘味、グミのような食感など、食味にも大きな差別性を有しています。今後も高齢化が一層進むなか、健康、アンチエイジングに強い興味を持つ中高年層が気になる症状に対して「黒にんにく」が素材の安心・安全性や効果・実感を得やすいため拡大傾向にある。
にんにく市場規模と動向
1.にんにく作付面積と収穫量
にんにくの国内の作付面積は、1960年代初めは1,700ha程度でしたが、水田減反政策が開始された1970年から、作付面積が増加し始め、1974年には3,800haとピークに達し、1970年代から1990年にかけては、3,000~3,300haで推移していた。
その後、農家の高齢化や労働力不足、食の多様化による消費の増加で外国、特に中国からの輸入品の急激な増加など市場価格が低下したことなどにより、生産量が半減し、作付け面積は2,000ha前後で推移していたが、その後は輸入品との差別化が進み、一定の生産量を維持して2007年から少しづつ増加して、2011年から2013年には2,240~2,340haと若干増加傾向にある。
これには、生活者の安全安心意識や健康志向の高まり、食生活や食習慣の変化から国産にんにくの需要増加に合わせて有名産地以外での新たなにんにくの産地づくりが要因となり、作付面積では増加傾向にあるが、収穫量は20,500トン前後と横ばい状態なため、さらなる産地づくりが望まれる。
2.にんにくの輸入先と輸入量
輸入は中国だけでなく、アメリカなどからも輸入されているが、中国産の輸入量は群を抜いている。しかし、中国産のにんにくの高騰や食の安全意識から中国産のにんにくの輸入量は2005年のピーク時・約30,000トンは、2007年からピーク時の2/3の20,000トンに減少したものの、輸入額は2010年から中国産にんにくの高騰で約350,000万円といままでかつてない高い輸入額が続いている。
3.にんにくの主要産地
国内においては、青森、香川、北海道、岩手、宮崎、秋田県が主な産地。ここ数年における全国の作付面積は2,300ha前後で推移して、そのなかでも青森県は作付面積で国内の6割弱を占め、生産量では7割近くを占め変わらず全国一の産地で、冷蔵施設を所有して長期貯蔵が可能なため長期にわたって出荷している。
宮崎県は作付面積では全国5位だが、収穫量は第3位と作付面積は増えてはいないものの収穫量が大きく増加している。地方別にすると2位の香川を擁する四国は、作付面積 156ha、収穫量 1,330tに対して、九州は作付面積 211ha、収穫量 1,710tと差をつけている。
これは、今までは九州でにんにくの産地と言えば熊本だったが、それに宮崎・大分県の作付面積・収穫量が上回り増えていることに起因。九州は新しいにんにくの産地として期待出来る。
4.食と消費者ニーズの多様化
健康志向の高まりや食生活や食習慣の変化、食の問題から安全に対する関心が高まっている。新鮮で安全な国産野菜を食べたいと言う消費者のニーズから国産にんにくの需要が増加して、中国産など輸入ニンニクの使用が多かった大手スーパーや中華料理チェーンなどが、国産品にシフトする傾向にある。
にんにくは生鮮野菜としては食の多様化から中国料理、韓国料理、イタリア料理、エスニック料理など幅広い年齢に好まれて消費が拡大している。それ以外でも酢やしょうゆ、味噌といった調味料と加工された焼肉のたれやドレッシングやラー油など次々と新商品が開発され大きく消費を伸ばしている。
また、健康に役立つ有効成分を抽出して製造された健康食品や入浴剤や熟成発酵させた黒にんにくやサプリメントなどが開発され、にんにくの供給が需要に追い付かないほど消費が拡大している。
5.異業種の農業参入
近年、企業の農業参入が急激に増加している。
高齢化で減っている担い手を増やし、耕作放棄地を減らすことで農業を活性化させる目的で2009年の改正農地法により農地を貸借するための規制が緩和され、農業生産法人に限らず一般法人でも農地を借りられるようになったためと、農業生産法人への出資比率が緩和され、一般法人でも農業に従事することが容易になったことが原因で、これにより株式会社による農業経営(農地リース方式)が始まった。
農林水産省によると、株式会社・NPO 法人などの農業に参入している一般法人の数が2010年3月から2012年12月にかけて劇的に増えている。
農業参入のパターンは、大きく分けて二つのケースがある。
一つ目は、食品製造業や食品卸売業などの食品を扱う食品関連企業が参入するケース。
二つ目は、建設業や製造業、医療法人、鉄道会社やシステム会社などの食品を扱わない業種である異業種企業が参入するケース。
農林水産省の統計によれば、異業種から農業に参入した法人の業務形態として最も多いのは食品関連産業、次いで建設業となっている。食品関連産業においては、主に本業の強化として天候等の影響を受けやすい原材料の価格変動リスクを自社調達により抑えることが可能となり、有機農産物のような付加価値の高い製品を生産することによる顧客へのアピール効果が高いことが挙げられる。
建設業では公共事業削減を受けて、土地や人員等の余剰資源を有効活用して、資本力やものづくりで鍛えた技術、ノウハウをもとに、安心・安定・安価な農作物を提供して新たな収益事業を創造することが参入動機として挙げられる。特に建設業のにんにく栽培、にんにく加工品への参入が目立ち、大規模産地がこれ以上増産できないこと、国内産ブームでにんにくが不足していることに着目して事業が進められ功を奏している。
企業が農業に参入することで、経営の合理化、農地集約や先進技術活用による生産性向上、流通経路や販売ノウハウを活かした販路の拡大などが期待される。
6.黒にんにくで再生
近年にんにくを加工した黒にんにくの製造・販売での取り組みが拡大して、農林水産省が推進する地域の農林水産物や資源を活用した第6次産業の成功例として注目を浴びている。
イ.にんにく生産農家
ロ.建設業関連
ハ.農協(JA)
ニ.まちづくり
生産農家が法人化して株式会社や有限会社または農事組合法人などを設立して、にんにくを加工して黒にんにくなど新商品を開発製造し、収益の安定化を図る取り組みが増えている。生産農家ゆえの強みで生産から加工・販売までを一貫して行うことで農業経営の多角化・安定化を図られている。
前項にも記述した通り、建設業は公共事業削減などから新たな収益事業を模索するなか、2009年の改正農地法により土地や人員等の余剰資源を有効活用する方策として農業へ参入している。なかでもにんにくを発酵熟成させた「黒にんにく」の開発から、付加価値の付いたにんにくを製造・販売する新規事業が相次いでいる。本業でのノウハウや技術力、地域との連携で業績を伸ばし、本業に見切りをつけて転業する会社も出ている。
生産農家と資金力と販売力のある農協(JA)が連携して、農協(JA)が「黒にんにく」を製造・販売を行っている。これは地域の活性化、生産農家の品質の維持・収益向上、農協(JA)の収益向上、流通コストの削減などの効果がされ、新たな商品の開発や提供、販路の拡大など、今後も相互の連携を通じた経営の発展が期待される。
また、にんにく栽培からにんにく発酵熟成、そしてまちづくりまで一貫して取組んでいるところがある。まちづくりスタッフ、町会議員が中心となり、製造会社、生産農家が協力し経産省推進の農商工連携事業として発足し、新たな特産物としてにんにくを栽培して、熟成発酵させ「黒にんにく」を製造・販売している。付加価値の付いた黒にんにくの加工販売というアグリビジネスを通してまちづくりを行う一つのビジネスモデルとしてこの取り組みやノウハウが過疎や限界集落に広がっている。
国産にんにく価格高騰化の原因
昨今青森産のにんにくを始め国産のにんにくの価格が高騰化しています。その原因としては次のようなものが挙げられます。
1.中国産にんにくの高騰化
2.天候不良による不作
3.食の問題から中国産から国産へシフト
4.にんにく農家の高齢化と後継ぎ不足
5.黒にんにく、サプリメントの市場の増大
天候悪化の影響で作柄が悪く、品薄感が強いため日本でのにんにくの価格は昨年の2倍以上が続く見通しである。
その他、中国の急激な経済成長により、食に対する需要は増加の一途を辿って中国産のにんにくが高騰しているのは、不動産や株式市場から投機資金がシフトし、ニンニクがカネ余りの新たな受け皿になっているからである。これは利潤追求に血眼になる中国人社会の諸相を反映したもので、これから先も続くものと思われる。
天候の問題を除いては、これから先も変わることがなく、これから先も続くだろうと思われる。
そのため、にんにくの高騰化、供給不足には新らたなるにんにくの産地づくりと新たににんにくを栽培する者を増やすことが求められている。
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